犬の歩き方がおかしい…。
足を引きずっていたり、地面につかない様に浮かせる、不自然に腰を振って歩くなど。
このような症状が見られた場合は、なんらかの病気や異変を抱えている可能性が高いです。
今回は、犬の歩き方がおかしいと感じた時に考えられる、病気やトラブルについて紹介します。
歩き方に異変を感じたら、早急に病院へ連れて行きましょう。
歩き方によって違う
犬の歩き方に異変を感じた時、まず疑うのは外傷があるかどうかです。
外傷の多くは、散歩をしている時に、ガラスの破片や石などでケガをしてしまったり、
夏場は、アスファルトが熱くて火傷などの原因が考えられます。
また、足の指と指の間にマダニが寄生することもあるので、
指の間も細かく見てあげてください。
外傷が見られない場合は、骨や関節、感染症や神経の病気の可能性があります。
歩き方によって病気もさまざまです。
歩き方が不自然
足をかばいながら歩くため、不自然な歩き方になっている場合があります。
このような場合は、
股関節形成不全や変形性脊椎症などの病気が考えられます。
引きずりながら歩く
足を引きずりながら歩いたり、地面に付かないように浮かせて歩いている場合は、
骨折や脱臼、骨の腫瘍など骨や関節の異常があると考えられます。
その場合は、腫れや内出血などの症状も出ていないかを確認してください。
外傷を確認できない場合は、
骨や関節の病気以外に椎間板ヘルニアなどの神経の病気を発症している可能性もあります。
ふらふらする
普段はまっすぐ歩く犬が、ふらふらと歩いている場合は、
感染症や脳の病気が考えられます。
もしくは他の病気が原因で体がひどく弱っている可能性もあります。
足の形がおかしい
後ろから犬の立ち方を見た時に、
足の形が外側や内側に不自然に曲がっている場合は、骨や関節の病気。
または、クル病のような栄養障害が考えられます。
考えられる病気は?
骨の腫瘍
骨にできる腫瘍の多くは、足の骨に起こり、悪性の場合がほとんどです。
小型犬に比べて、大型犬の方がかかりやすいと言われています。
特にケガをしたわけではないのに、足を引きずったりと歩行の異常が見られます。
足を引きずるのは、痛みがあるからです。
中には骨腫という良性の腫瘍もありますが、多くは以下の悪性腫瘍になります。
骨肉腫(悪性)
主に足の長い骨に起こる腫瘍になります。
肺などの臓器に転移がしやすい、悪性度の高い癌です。
軟骨肉腫(悪性)
主に関節の軟骨にできる腫瘍になります。
歩行異常が見られるほか、関節が腫れることもあります。
また、鼻や肋骨、股関節などにも起こる場合があります。
いずれも放置すれば肺などに転移してしまい、命の危険があるため、
現在は残念ですが足を切断するしかありません。
転移を防ぐため、切断後に薬物療法や放射線療法を行います。
椎間板ヘルニア
背骨の脊髄が圧迫されることにより、足が麻痺したり痛んだりする病気です。
主に、足の短いダックスやシー・ズー。
肥満になりやすいパグなどの犬種、体重の重い大型犬が多くかかりやすいです。
・原因
椎間板が飛び出てしまい脊髄を圧迫してしまうのが原因です。
・症状
足の神経が麻痺してしまい、足がもつれ、歩けなかったりと歩行異常が見られます。
後ろ足だけが麻痺することもあれば、前足だけや片足だけなど様々です。
痛みがあるため触ると嫌がることも。
・治療
抗炎症薬を使い、症状を和らげます。
重症の場合は、手術で圧迫している部分を開放します。
変形性脊椎症
変形した脊椎が、脊髄を圧迫して神経症状が起こる病気です。
・原因
老化などによって脊椎が変形することが原因とされています。
椎骨の下の部分(椎体)が老化などで変形すると、脊髄を圧迫し痛みや神経症状が
あらわれます。
・症状
稀に症状が出ないこともありますが、一般的に強い痛みや神経障害が出てきます。
また、腰痛があり触ったり抱いたりすると激しく嫌がります。
歩行にも大きな障害がでることも。
・治療
炎症を抑える薬を使い、症状を和らげます。
重症の場合は、圧迫を緩和する手術をすることも。
内耳炎
耳の奥の内耳に炎症が起こる病気です。
重症の場合、難聴になったり体のバランスがとれずに歩けなくなることもある、
危険な病気とされています。
・原因
神経が障害されることが原因です。
内耳には、聴覚に関する神経や体のバランスを保つ前庭神経があります。
内耳に炎症が起こることでこれらの神経が障害され、難聴や運動障害などの症状を
引き起こします。しかし、内耳の炎症自体の原因は不明です。
・症状
飼い主さんの声や周りの音が聞こえず、反応が鈍くなり、重症の難聴を引き起こすこともあります。
徐々に進行するため、飼い主さんが気づけないことも。
また、一定方向にぐるぐる回ったり、頭を病気の耳の方に傾けたりします。
重症の場合は、歩くことも立つこともできず、転がってしまいます。
・治療
前庭障害の場合は、副腎皮質ホルモン(ステロイド系抗炎症薬)やビタミン剤を用いて
症状をやわらげます。
しかし、難聴には効果的な治療法は今のところありません。
骨と関節の病気
【骨の病気】
骨折
・原因
骨折の大半は、交通事故や高い所からの落下事故によるもので、
体に強い衝撃が加わったことによる外傷が原因です。
また、餌やホルモン異常などで骨が弱くなり、小さい衝撃を受けただけでも
折れてしまうこともあります。
・症状
骨折があると激しい痛みや患部の腫れ、足の変形などがみられます。
・治療
折れた骨を元に整えて固定します。
複雑骨折している場合は手術で骨をつなぐなど、症状に応じた方法での固定となります。
膝蓋骨脱臼
膝のおさらと言われる膝蓋骨が、ずれてしまう脱臼になります。
・原因
膝蓋骨は、滑車溝と言われる溝にはまっています。
しかし、膝蓋骨が滑車溝から、足の内側や外側に外れてしまうことが原因で起こります。
外れる原因として、外傷のほか、生まれつき滑車溝が浅い、
靭帯の位置がずれていたりすることです。
・症状
痛みが少なく、自然に治る場合もあります。
しかし、重症の場合は痛みと腫れが生じ、脱臼している側の足を地面から浮かせて歩いたり、
脱臼の仕方によって、膝が内側や外側に曲がることもあります。
・治療
ごく軽い症状の場合は経過観察だけで済む場合もありますが多くの場合は手術が必要です。
【関節の病気】
股関節形成不全
股関節を形成する骨が、遺伝によって十分に発達しない病気です。
・原因
遺伝的に股関節に異常があるとされています。
大型犬に多くみられ、生後6ヶ月~2歳頃までに発症すると言われています。
・症状
腰が左右に揺れたり、後ろ足を揃えて飛ぶようにして歩いたり、座れなくなったりします。
そのため、徐々に運動を嫌がる、うまく立ち上がれない、すぐに座り込むなどの
運動障害がみられます。
・治療
軽い症状の場合は、安静にして体重を増やさないようにします。
痛みがあれば、薬を用いて症状を抑えます。
しかし、重症の場合は手術になります。
膝の前十字靭帯断裂
加齢により靭帯が弱くなったり、肥満で膝に負担がかかると、膝関節の靭帯が切れ
運動に障害が出る病気です。
また最近では、肥満が原因で小型犬にもよく発症します。
・原因
事故や激しい運動により急激な圧力が加わることで、前十字靭帯断裂の原因となります。
その他に、老化による靭帯の脆弱化や、肥満による膝関節への負担の増加が
原因の場合もあります。
・症状
突然足をあげたままの状態か、少し地面につけるだけになります。
・治療
保存療法か外科療法のどちらかになります。
保存療法の場合は、抗炎症薬を用いて安静にし、炎症が治まるのを待ちます。
外科療法では、切れた靭帯の代わりに膝関節の動きを安定化させるために、
靭帯の再建手術を行います。
レッグペルテス病
大腿骨等への血流が不足することで、骨頭が壊死してしまう病気です。
・原因
血液が不足することで大腿骨頭が変形したり、壊死したりします。
血液が不足する理由として、ホルモンの影響や、栄養障害、遺伝などが関係していると
言われていますが、はっきりしたことは分かっていません。
・症状
生後半年程の、小型犬の幼犬によくみられます。
痛みから突然後ろ足を引きずったり、地面につかにように歩いたりします。
片足に起こる場合が多いですが、両足に発症することもあります。
・治療
軽い症状の場合は、薬で痛みを抑え、運動を制限し、安静にして様子をみます。
しかし進行している場合は、壊死した大腿骨をきれいに切除する手術を行います。
犬の歩き方がおかしい場合に考えられる病気を紹介しました。
この他にも犬は、熱中症になっている場合もヨロヨロしたりと歩き方に異常が見られます。
歩行に異常がある場合、その多くは痛みを伴うことも多く、愛犬の苦痛を軽減させるためにも、
歩き方がおかしいと思った場合は早急に病院へ連れて行ってあげてください。
また、日ごろから愛犬を観察し、異常を早期発見できるようにしましょう。