犬には春と秋に「換毛期」がありこの時期に毛が大量に抜けることは自然なことです。
しかし、換毛期以外の時期に毛が大量に抜ける場合は、病気の可能性があります。
今回は犬の脱毛についてまとめました。
ぜひ参考にしてください。
抜け方や抜けている場所に注目
毛の抜け方や、抜けている場所によって考えられる病気はさまざまです。
・円形に毛が抜ける
円形に脱毛が見られる場合は、皮膚糸状菌症の疑いがあります。
初めに、目や耳、鼻、足先などから脱毛していき、全身へと広がっていきます。
・全身の毛が抜ける
広い範囲にわたって毛が抜ける場合は、膿皮症の可能性があります。
強いかゆみがあるため、体を掻いたり、噛んだりすることで毛が抜けていきます。
・目や口のまわりの毛が抜ける
目や口のまわり、前足の毛が抜ける場合は、ニキビダニ症や皮膚糸状菌症の可能性があります。
脱毛部位が段々広がっていき、かゆみが強くなります。
・その他の場所が抜ける
上記以外にも、左右対称に抜けたり、背中などから抜けたりする場合もあります。
体の同じ場所をなめ続けたり噛んだりして、毛が抜ける場合はストレスの可能性もあります。
考えられる病気
もし愛犬の脱毛が換毛期によるものでなかったら…
病気が原因で毛が抜けている場合は早急に治療してあげたいですよね。
毛が抜ける病気とは一体何があるのでしょうか。
アトピー性皮膚炎
アレルギーを引き起こす原因物質を吸い込むことで皮膚炎を引き起こします。
・症状
強いかゆみがあるため、前足で体を頻繁に引っかいたり、口でなめたりします。
そのため、フケが増えたり皮膚が傷ついたり、ただれたりします。
目のまわりや耳、関節の内側などに多くみられます。
・原因
ほこりやダニ、花粉などを口や鼻から吸い込むことで引き起こします。
また、アトピー性皮膚炎の多くは遺伝的な要素が関係しています。
・治療
ステロイド
ノミアレルギー性皮膚炎
体に寄生したノミのアレルギーによって、皮膚に炎症が起こります。
・症状
皮膚にかゆみ、赤い発疹、脱毛がみられます。ノミの数が多いと、
猛烈なかゆみがあり、犬は激しく体を掻きます。
特に耳の後ろ、背中、腰周辺に症状がみられます。
その他に、しっぽや外陰部、肛門のまわりにも出ることがあります。
・原因
体に寄生しているノミの多くは、ネコノミと言われる体長1~2mmのノミです。
ネコノミが犬の血を吸うときに出る唾液に対して、アレルギー反応が起こります。
・治療
アレルギーの原因であるノミを駆除するために、皮膚に薬剤を用います。
また、ノミの卵や幼生がつきやすい、絨毯や畳などをこまめに掃除します。
タオルや犬がお気に入りのぬいぐるみなども洗って清潔にするようにしましょう。
ノミは皮膚炎を起こすだけでなく寄生虫の感染源になったり、
人間を刺したりもするので、繁殖しないように予防することがとても大切です。
ニキビダニ症
毛根にニキビダニという小さなダニが多数寄生することにより、
引き起こされる病気です。
アカルス、毛包虫症とも呼ばれています。
・症状
目のまわり、口や下あご、前足の先などに小さい脱毛が起こります。
そして徐々に脱毛範囲が広がっていきます。やがて脱毛部分に赤いできものができ、
皮膚がただれていきます。
かゆみはあまりないですが、二次的に膿皮症を引き起こすと強いかゆみが出ることもあります。
・原因
ニキビダニは、小さなイモムシ状のダニで、顕微鏡でしか見ることができません。
多くの犬がもともと持っているとされ、授乳期に母犬から感染すると言われています。
しかし通常は繁殖は抑えられています。
ですが、成長途中の子犬や老犬のような抵抗力が弱い場合に、
毛根部分でニキビダニが繁殖し、発症しやすくなります。
・治療
主に抗生物質(抗菌薬)を用いたり、注射をして治療していきます。
また、症状が全身に広がっている場合は、良くなるまでに3ヶ月以上かかることも。
膿皮症
皮膚に細菌が異常に増殖する皮膚病です。
犬によく見られます。
・症状
初めに皮膚に赤い発疹が出始め、徐々に広がっていき、
やがて中心が真っ黒になるのが特徴です。
かゆみが強いため、体を掻くことで激しい脱毛が起こります。
また、進行すると皮膚が膿、悪臭や痛み、発熱などの症状を引き起こします。
湿気の多い夏の時期が一番発症率が高いと言われています。
・原因
犬の皮膚には、普段から多くの細菌が付着しています。
体の免疫力が落ちていたり、慢性の皮膚病や加齢により、抵抗力が落ちていると、
細菌が異常繁殖し皮膚が化膿していきます。
たいていの場合、黄色ブドウ球菌が繁殖していることが多くみられますが、
進行すると緑膿菌などの悪性度の高い細菌が繁殖することもあります。
・治療
犬用シャンプーで皮膚を洗い、抗生物質(抗菌薬)を内服または患部に塗り薬を使用します。
もともと皮膚病にかかっていて、二次的に膿皮症を引き起こした場合は、
原因となっている疾患の治療が最重要になります。
皮膚糸状菌症
白癬などの真菌(カビ)による皮膚病で、人間にも感染する恐れがあります。
・症状
感染した部位が円形に脱毛し、フケのようなかさぶたができます。
かゆみはほとんどありませんが、進行すると脱毛が広がっていきます。
また、顔や目のまわり、耳などは皮膚がやわらかいため、感染しやすいとされています。
大体数か月で自然治癒しますが、カビがいなくなったわけではなく、
他の犬や猫に感染させる可能性のあります。
・原因
人間の水虫の原因でもある白癬菌に似ている、
犬小胞子菌や石膏状小胞子菌などの真菌に感染することで皮膚炎を引き起こします。
皮膚糸状菌症に感染している犬や猫などから移り、子犬や毛の生えかわる時期に
発症することが多くみられます。
また、原因とされる真菌は私たち人間にも感染し、タムシのような皮膚炎を起こします。
・治療
原因のカビは症状の出ている部位だけではなく、周囲に感染現源となる胞子を
まき散らしています。そのため、全身の被毛を刈り、体全体の治療が必要です。
カビを殺す薬による薬浴をして、真菌を殺す内服薬や塗布を使用します。
完治するまでに、2~3ヶ月ほどかかります。
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの分泌が減少していく病気です。
コッカー・スパニエル、ドーベルマン、ゴールデン・レトリバーなどに多くみられます。
・症状
元気がなく食欲も無いのに体重は増えていきます。
フケが出る、首、耳、しっぽなどから徐々に左右対称の脱毛が起こります。
また、突然攻撃的になったり、神経質になったりと問題行動を起こす場合も。
まぶたが下がり顔がむくむため悲しげな表情にもなります。
・原因
自分で自分の組織を壊す、自己免疫という免疫異常が原因とされています。
その他にも、甲状腺の腫瘍が原因に場合もあります。
・治療
不足している甲状腺ホルモンを薬を投与して補います。
基本的に生涯投与し続けなければなりません。
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
クッシング症候群とも言われています。
副腎とは腎臓の上部にある組織のひとつです。
腎臓から分泌される、炎症を抑えるホルモン(糖質コルチコイド)が過剰に分泌される
病気です。
・症状
多飲多尿になり、お腹がふくれてきます。
また、皮膚には弾力がなくなり全体に被毛が薄く、乾燥してきます。
また、背中に左右対称の脱毛がみられます。
・原因
副腎皮質ホルモンの分泌を促す、副腎皮質刺激ホルモンを分泌する下垂体に腫瘍などがあり、
副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されることによって発症します。
また、副腎自体の腫瘍や長期にわたって、
副腎皮質ホルモン(ステロイド系抗炎症薬)を使用している場合も原因となります。
・治療
腫瘍が原因の場合は、薬を用いたり手術で腫瘍を切除します。
ステロイドに投薬が原因の場合は、少しずつ使用量を減らしていきます。
今回は犬の脱毛と病気についてまとめました。
脱毛の原因はさまざまです。
換毛期の脱毛は自然なことなので心配する必要はないですが、
それ以外の時期での脱毛が激しい場合は、一度病院へ連れて行ってあげてください。
原因を早期に特定し治療することが大切です。